弁護士安武のブログ

2016.08.04更新

千葉県 松戸市の弁護士 安武(ヤスタケ)です。

今日は、債権届出書のお話です。

破産管財事件では破産者にお金を貸していた人(以下、「債権者」といいます。)に対して、裁判所から、「債権届出書」なる書面が送られます。


破産管財事件を担当すると、債権者の皆さま方から、管財人である私に、

債権届出書が届いたけれど、どうすればいいの?

書くの面倒そうだけれど、書かないとどうなるの?」

などとお問い合わせをいただくことがあります。


1.破産手続きの目的

そもそも、破産手続きの大きな目的は、破産者の財産を集めて、債権者の皆様に分配することにあります。

たとえば、借金の総額が1億円の破産者がいるとします。お金が回らなくなって1億円は払えないけれど、預貯金や車や自動車その他をお金に換えていけば、全部で1000万円にはなるとします。管財人は、破産者の財産をお金に換える権限を使って、破産者の財産をお金に換えたうえで、集まった1000万円を債権者の皆さま方に分配します。

この分配のことを「配当」といいます。ちょうど、株式会社が株主の皆さま方に利益を分配する株式「配当」のイメージですね。

 

2.債権届出書を出す意味

そして、管財人による配当は、債権届出書を提出された債権者の皆さまがたに、債権額に応じてなされます。

そうすると、債権届出書を提出していなければ、配当してもらえない可能性があるということです。

また、債権額に応じて、とはどういう意味でしょうか。

たとえば、さきほどの例でいうと、破産者は借金1億円のうち9000万円をA銀行に、1000万円をBさんに借りていたとします。管財人が集めた財産は1000万円。借金総額1億円のちょうど10分の1です。

そうすると、

A銀行には9000万円の10%の900万円、

Bさんには、1000万円の10%の100万円

配当します(※厳密には管財人の報酬などもここから支払われますが、説明のため省きます)。


3.配当がないことも多い

ただし、多くの破産事件の場合、配当できるほどの財産は集まりません。

そうすると、債権者の皆さま方が、お忙しい中大変な思いをして債権届出書を完成させて提出されたとしても、それに見合うだけのメリットがないことも多いことになります。

ですので、債権届出書を出す・出さないは債権者の皆さま方の自由です。出さないからといって処罰されることはありません。債権届出書を出さないデメリットは、配当できるほどの財産が集まった場合に、届出書を出してさえいればもらえたはずのお金を配当してもらえないことがある、ということです。


今日は債権届出書のお話でした。

投稿者: 弁護士安武慎作

2016.07.29更新

松戸市の弁護士 安武(ヤスタケ)です。

 

某社会福祉協議会さんの顧問や、成年後見制度の専門相談などを担当しています。

また、成年後見事件を多数担当していることもあって、成年後見について考える機会が多くあります。

今回は報酬のはなしです。

 

成年後見人、保佐人、補助人(以下、「成年後見人等」といいます)が、成年後見人等として行った業務に対する報酬は、

本人(成年被後見人、被保佐人、被補助人)の財産から支払われるのが原則です。

 

しかし、本人が生活保護受給者であるなど、本人に報酬を支払うだけの財産がないことがあります。

そんな場合、報酬を払えないので成年後見制度を利用出来ないのでしょうか?

いやいや、そんなことでは、お金に余裕がある人しか成年後見制度を利用できず不公平です。

 

このような場合には、市町村などで定める

「成年後見等報酬助成金制度」(名称はさまざまです)

を利用できます。例えば、私の事務所のある松戸市では、平成28年7月現在、

・本人が在宅のとき・・・ひと月2万8千円

・本人が施設入所者のとき・・・ひと月1万8千円

が上限として支給されます。細かな条件については、こちらをご覧ください。

 

但し、注意しなければならないことがあります。

市町村によっては、首長申立ての場合しか、報酬助成金をもらえない場合があるからです。

例えば、平成26年4月の調査によれば、千葉県の千葉市、柏市や我孫子市などがそうです。

他にも、本人の親族が成年後見人等になる場合には支払われないケースもあります。

 

成年後見等の申し立てをする際、成年後見人等になる予定の人は、報酬がきちんと

支払われるかどうかを確認しておく必要があるかと思います。

投稿者: 弁護士安武慎作

2016.07.27更新

千葉県松戸市の弁護士 安武(ヤスタケ)です。

 

破産申立てをする人にとって最大の関心事は、免責されること、つまり、債務(借金)を返済する責任(義務)を免れることです。

そうすると、破産者は、免責が認められなくなるような行為等を厳に慎まなければなりません。

どうすれば免責が認められなくなるのか、いわゆる免責不許可事由については、破産法252条第1項が定めています。

今回は免責不許可事由のはなしです。

 

たとえば、破産管財事件において、破産者が自宅からなかなか退去してくれない場合があります。

引っ越しの準備が進まないとか忙しいとかしんどいとか、いろいろな理由をつけては退去してくれないのです。

その場合、管財人としては、自宅から退去しないと免責されませんよ、と説明して(半ば脅すようですが)早く

出て行ってもらうようにしなければなりません。

 

では、自宅から退去しないことは、免責不許可事由のどれにあたるのでしょうか。

自宅に居座ると、自宅を高く売るタイミングを逃すなどして自宅の価値を減少させる恐れがあります。

よって、価値減少行為(破産法252条第1項第1号)にあたると考えられます。

 

思い入れのある自宅を手放したくないのは、きっと誰もが理解できる心情でしょう。

しかし、退去を遅らせたために免責が認められなくなると破産申立てに踏み切った勇気、時間や費用が

台無しになってしまいます。

 

破産者は管財人に協力し、速やかに自宅を退去したいものです。

 

投稿者: 弁護士安武慎作

2016.07.25更新

千葉県 松戸市の弁護士 安武です。

 

破産管財事件で、破産者が自動車を使用している場合はままあります。

まず考えるのは、破産者が事故を起こし破産管財人が運行供用者責任(自賠法3条)

を問われないために、とりあえず鍵や車検証などを預かって運転させないようにすることです。

 

その後の破産管財人の対応については、その自動車が、

・破産者の所有である

・破産者は使用者ではあるが、所有権留保がついている

などの場合については、文献やサイト等で処理方法がたくさん紹介されています。

 

ただ、まれに、破産者が自動車を無償で借りて乗っているときがあります。

使用貸借の場合です。どうすればいいのかな、と戸惑ったことがありました。

 

明確に述べた文献はないのですが、結局、運行供用者責任は負わないと考えています。

なぜなら・・・

破産管財人には破産財団に属する財産について管理処分権があります。

管理処分権があるため、破産財団を構成する自動車の事故について、運行供用者責任を負う可能性があります。同責任の要素である運行の利益、運行の支配のうち、特に運行の支配があるといえるのだろうと考えております。

しかし、破産者が使用貸借上の借主としてその自動車を無償で借りて使用しているにすぎない場合は、その自動車はそもそも破産者の財産とはいえず財団に属しない以上、破産管財人には管理処分権もありません。管理処分権は運行の支配を基礎づける権限であるところ、その基礎づける権限がないから、運行供用者責任も負わない、ということかと思います。 

 

投稿者: 弁護士安武慎作

2015.08.18更新

よろしくお願いいたします。

投稿者: 弁護士安武慎作

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