千葉県 松戸市の弁護士 安武(ヤスタケ)です。
今日は、債権届出書のお話です。
破産管財事件では破産者にお金を貸していた人(以下、「債権者」といいます。)に対して、裁判所から、「債権届出書」なる書面が送られます。
破産管財事件を担当すると、債権者の皆さま方から、管財人である私に、
「債権届出書が届いたけれど、どうすればいいの?
書くの面倒そうだけれど、書かないとどうなるの?」
などとお問い合わせをいただくことがあります。
1.破産手続きの目的
そもそも、破産手続きの大きな目的は、破産者の財産を集めて、債権者の皆様に分配することにあります。
たとえば、借金の総額が1億円の破産者がいるとします。お金が回らなくなって1億円は払えないけれど、預貯金や車や自動車その他をお金に換えていけば、全部で1000万円にはなるとします。管財人は、破産者の財産をお金に換える権限を使って、破産者の財産をお金に換えたうえで、集まった1000万円を債権者の皆さま方に分配します。
この分配のことを「配当」といいます。ちょうど、株式会社が株主の皆さま方に利益を分配する株式「配当」のイメージですね。
2.債権届出書を出す意味
そして、管財人による配当は、債権届出書を提出された債権者の皆さまがたに、債権額に応じてなされます。
そうすると、債権届出書を提出していなければ、配当してもらえない可能性があるということです。
また、債権額に応じて、とはどういう意味でしょうか。
たとえば、さきほどの例でいうと、破産者は借金1億円のうち9000万円をA銀行に、1000万円をBさんに借りていたとします。管財人が集めた財産は1000万円。借金総額1億円のちょうど10分の1です。
そうすると、
A銀行には9000万円の10%の900万円、
Bさんには、1000万円の10%の100万円
を配当します(※厳密には管財人の報酬などもここから支払われますが、説明のため省きます)。
3.配当がないことも多い
ただし、多くの破産事件の場合、配当できるほどの財産は集まりません。
そうすると、債権者の皆さま方が、お忙しい中大変な思いをして債権届出書を完成させて提出されたとしても、それに見合うだけのメリットがないことも多いことになります。
ですので、債権届出書を出す・出さないは債権者の皆さま方の自由です。出さないからといって処罰されることはありません。債権届出書を出さないデメリットは、配当できるほどの財産が集まった場合に、届出書を出してさえいればもらえたはずのお金を配当してもらえないことがある、ということです。
今日は債権届出書のお話でした。